2020.05.22

話題の飲食サブスクサービス。その狙いは顧客データの見える化

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飲食店のサブスク(サブスクリプションサービス=定額課金サービス)が話題になっている。

世間の注目を浴びるようになったのは、牛角が2019年11月29日に始めた「焼肉食べ放題PASS」からだ。月額1万1000円でパスを購入すると、3480円の牛角コース(90分食べ放題)が、何回でも無料で利用できる。「3回利用すれば元が取れる」と大人気になった。人気は過熱気味になり、対象となった3店舗は連日予約で満席となり、一般の客が入れない状態に。そこで牛角では、急遽「焼肉食べ放題PASS」の販売を中止し、対象店舗を広げてサブスク利用客を分散させるなどの対応をした。
牛角では3月2日に、食べ放題ではなく、飲料、定食など、メニューや利用時間を限定したサブスクサービスの販売を始めている(3月末で販売終了)。牛角のサブスクはあくまでも「試験販売」。試行錯誤をしながら、最も効果のあるサブスクサービスを模索している。

飲食サブスクは牛角以外にも広がっている。居酒屋「金の蔵」では、月額4000円で、飲み放題のサービスを始めている。あくまでも飲料だけなので、来店してもらえばフードの注文が見込める。この他、ラーメン店、居酒屋、レストランだけでなく、エステ店、美容室、パソコン教室などにも広がりを見せている。

このような店舗サブスクが広がる理由は、年々店舗の集客が難しくなっていることが背景となっている。店舗そのものに相当の魅力がなければ、もはやお客はきてくれない。以前は「客がお店を探していた」が、すでに「お店が客を探す」時代になっている。
このような状況の中で、サブスクサービスは店舗にとってさまざまなメリットがある。
1)話題になり、集客効果が期待できる。SNSでも拡散されやすい
2)定期券方式なので、リピーターを育てることができる
3)先に売上が立つので、資金繰りを改善させる
消費者にとって魅力的なサービス内容、価格設定にすると原価割れを起こしかねない難しさもあるが、このような数々のメリットを考え、赤字分をプロモーション経費として考えれば、思い切った価格設定をすることも可能になる。多くの飲食店が、最適なサービス内容、価格を設定するための試行錯誤を始めている。

ところで、このようなサブスクは、カフェチェーンでは以前から行われている。回数券や定期券を発行し、リピーターを確保しようとするものだ。このようなカフェの旧サブスクと、現在広がりを見せている飲食サブスクには大きな違いがある。
それは、現在の飲食サブスクは、サブスク決済を支援するクラウドサービスを利用し、スマートフォンから購入をし、スマホ画面を表示することでサブスクサービスを受けられるようになっていることだ。
これは単に紙の定期券が電子定期券になったというだけのことではない。利用者のプロフィールデータが取得できる。ここが飲食サブスクの最も大きなポイントだ。

従来飲食店というのは、お客さまにきてもらい、現金で支払いを受けていた。これは匿名のお客さまだった。しかし、サブスクでは利用者のプロフィールが分かり、過去の注文履歴もわかるようになる。つまり、記名のお客さまになる。
顧客のデータが取得できることは大きい。例えば、顧客の居住地域分布がわかるだけで、近所の人がくる飲食店なのか、移動の途中で立ち寄る飲食店なのかがわかるようになる。キャンペーンのチラシを近所にポスティングした方が効果があるのか、駅近くで手配りした方が効果があるのか、的確な施策が打てるようになる。

従来、このような顧客を読み解く業務は、優れた店長の勘に任されていた。来店客を観察することでさまざまな情報を読み取り、的確な施策が打てる優秀な店長は確かに存在する。しかし、そのような人材はごくわずかだ。多くの店長が、手探りで効果があるのかどうかはっきりとしない施策を漫然と繰り返すことになっていた。
サブスクを提供することで、顧客の属性を見える化することが可能になり、データに基づいた施策、改善ができるようになる。サブスクはこの顧客の見える化の入り口になっているのだ。

流行っているからという理由で、サブスクサービスだけを始めるというのは、飲食店にとってあまり意味のあることにはならない。今日の消費者は非常にスマートなので、得をしないと思えば利用しないし、得をすると思えば利用する。消費者が得をするということは店舗側はその分損をすることになる。その「損」=コストにより、何を得るのか。その戦略が必要になってくる。
サブスクだけとりあえずやってみるというのではなく、その後にどのように顧客の見える化を進めていくのかという大きな絵を描いてから始める必要がある。大きな絵が描けていれば、サブスクによるお得さは、割引ではなく投資コストとして捉えられるようになり、結果として、消費者が得をする分サブスクプランを設定できるようになる。そのようなサブスクは歓迎され、集客ができ、お客さんにも喜んでもらえるといういい循環が回り始めることになる。

といっても、飲食サブスクの潮流は始まったばかり。オンラインでの簡単な申込み方法や店舗でのサブスク誘導方法、お客さまと店舗と双方にメリットのあるプランなど、どの飲食店も最適なサブスクサービス構築のために試行錯誤をしている段階だ。そこで、次回は、台湾のスーパー「全聯福利中心」(PX Mart)の事例を紹介したい。PX Martは、中高年の顧客が中心となる庶民派スーパーだが、独自のスマホ決済を導入し、スマホアプリからサブスク的なまとめ買いを可能にするなど、多彩なEC導入に成功をしている。スマホやキャッシュレス決済を苦手とする中高年顧客に、スマホECを導入したという学びの多い事例だ。(執筆:牧野 武文氏)




居酒屋チェーン「金の蔵」のサブスク。月額9999円で、1日1回、飲み放題、唐揚げとポテトフライ食べ放題になる。サブスクプラットフォーム「MONSTER PASS」で購入することができる。
https://monster-pass.com

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