クレジットカード決済の基礎知識 – 仮売上処理・サブスク決済(継続課金)で、売上拡大 – | PCI DSS Ready Cloud

クレジットカード決済の基礎知識 – 仮売上処理・サブスク決済(継続課金)で、売上拡大 –

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クレジットカードの決済の基礎知識

クレジットカードの決済方法には、「一括払い」「分割払い」「リボルビング払い」などがあることはどなたもよくご存知だと思います。商店にとっては、決済時に設定をするだけで、入金タイミングなどはどれも同じであるため、あまり強い関心はないかもしれません。

しかし、これ以外に、「仮売上処理」と「実売上処理」、さらには「サブスク決済(継続課金)」などの決済処理方法があることをご存知でしょうか。この決済処理の方法を理解すると、お客様にさまざまな決済上のサービスを提供できるようになり、販売機会を大きく増やすことが可能です。

仮売上処理と実売上処理とは?

仮売上処理

クレジットカードを決済端末に読み込ますと、サーバーと通信が行われ、承認(オーソリ)が行われます。オーソリは「信用承認」とも呼ばれ、カードが不正なものでないことをチェックするのが主な目的です。

さらに続けて、仮売上処理が行われます。例えば、利用者が20万円の買い物をクレジットカードで決済した場合、そのクレジットカードに利用限度額の枠が20万円以上残っている(与信枠)かどうかも同時にチェックされ、残っている場合は20万円の与信枠を確保してしまいます。つまり、商店に対して、「このカードは正当なものです」という承認をするのがオーソリで、「20万円を支払う能力」という与信枠確保をするのが仮売上処理です。

実売上処理

この後に、実売上処理が行われます。20万円の買い物であれば、20万円を決済し、おなじみのレシートがプリントされます。
一般の小売店での店頭販売では、仮売上処理と実売上処理が連続して行われることがほとんどで、仮実同時決済と呼ばれます。

仮売上処理と実売上処理を同時に行わないケース

この仮売上処理と実売上処理は、同時に行わなければならないわけではありません。時間をおいて別々に決済をしてもいいのです。

ECサイト:購入時に仮売上処理、出荷時に実売上処理

利用者が商品を購入した時点では仮売上処理のみが行われ、その後、在庫が用意でき、(多くの場合は)発送をした時に実売上処理が行われます。
店舗での対面決済と同じように、注文時に実売上処理までしてしまうと、何らかの理由で商品在庫が用意できなかった場合、返金処理をする必要が発生してしまうからです。仮実を分離しておけば、商品の発送ができなかった場合でも、実売上処理を行わなければいいだけです。仮売上処理の有効期間は、カード会社によって異なりますが、30日間から90日間です。

ホテル利用 デポジット:チェックイン時に仮売上処理、チェックアウト時に実売上処理

海外のホテルで一般的になっている宿泊時のデポジット(保証金)の相場は、ホテルによってまちまちですが、通常は宿泊料金の2倍から3倍程度です。チェックイン時に宿泊客にクレジットカードを提示してもらい、仮売上処理をして、デポジット料金の与信枠を確保し、実売上処理は行いません。そして、宿泊客がチェックアウトをするときに、宿泊料金を精算して、実売上処理を行います。万が一、お客様が宿泊料金を精算せずに帰ってしまったという場合でも、料金を計算して実売上処理をすればホテルに損害はありません。

飲食や物販など小売店でも活用できる仮売上処理

一般の小売店でも、この仮売上処理と実売上処理を分離する手法は活用できます。

飲食店の予約キャンセル料

飲食店のドタキャンが社会問題になっています。飲食店を経営する方から見れば、食材も用意して、他の予約をお断りして準備をするのですから、これほど痛いことはありません。
このような事故は、仮売上処理を利用することで防げます。店頭で予約を受け付けた場合は、クレジットカードを提示していただき、予想される飲食代金+α程度の仮売上処理をしてしまいます。そして、万が一キャンセルが発生した場合は、規定のキャンセル料を実売上処理をすればいいのです。実売上処理は、クレジットカードを決済端末に読み込ます必要はなく、店舗側の管理画面から実行することができます。

最近では、飲食店予約サイトでも、この仮売上処理に対応しているところが増えています。飲食店予約サイトに掲示をする場合は、このような対応をしているところを選ぶようにし、電話などで大人数の予約が入った場合は、可能な限り、予約サイトに誘導するようにすると、ドタキャン被害を最小限に抑えることができます。

ドタキャンは飲食店にとって最もつらいことですが、消費者側は「キャンセルを忘れていたうっかりミス」の感覚であり、悪意はないのが一般的で、強い口調でキャンセル料を請求すると、売り言葉に買い言葉で、話がこじれがちです。お店の評判にもかかわってきます。このような問題は、クレジットカードの仕組みを活用して、防止することができます。

予約販売

一般の小売店でも、将来入荷する商品の予約販売をすることがあります。しかし、予約時には商品は手渡せないのですから、代金を先にいただくというわけにもいきません。一方で、予約時に代金をいただかないと、飲食店と同じように、複数の店舗で予約をし、キャンセルするのを忘れるドタキャン問題が起こります。
これも、予約時に仮売上処理をしておくことで解決します。お客様に商品を引き渡したタイミングで実売上処理をします。
予約時に、クレジットカードを通すという処理をすることで、お客様も心理的にドタキャンをしづらくなります。

取り寄せ販売

在庫がなく取り寄せをしなければならない商品の場合も、商品がまだないのに代金を支払っていただくわけにはいきません。そこで、注文時には仮売上処理だけをしておき、引き渡し時に実売上処理をします。もし、注文時に仮実同時決済をしてしまうと、お客様の側から見ると、「商品を手にしていないのに、代金が引き落とされた」と感じます。また、仮売上決済をしておけば、実売上処理時にはクレジットカードは不要なので、「商品お引き渡し時には、手ぶらでお立ち寄りください」とご案内できることにもなります。

サブスクリプション決済とは?

その他には、サブスクリプション決済(継続課金:サブスク決済)という方法があります。これは、初回にクレジットカードでオーソリと仮売上処理をしておき、以降は一定期間ごとに一定額の実売上処理を繰り返していくというものです。毎月の会費のようなものを徴収する場合でも、毎回クレジットカードを持参いただく必要がありません。

スポーツジムや学習塾、カルチャーセンターなどで使われ始めています。また、ネットでは映像サブスク、音楽ストリーミングサービスなどですでに広く使われいます。

小売店でも活用できるサブスク決済

このようなサブスク決済は、会員ビジネス以外にも応用が効き、固定客を確保するのに役立ちます。例えば、喫茶店で「月15杯までコーヒー飲み放題で月額2000円」というサービスを提供することで、固定客の比率をあげることができます。多くの場合、コーヒーと一緒にサンドイッチなどを注文することが期待できるので、客単価のアップもねらえます。

しかも、大掛かりな投資は必要ありません。決済代行会社のサービスを利用して、サブスク決済を設定しておき、お客様にはパソコンなどでプリントした15枚綴りのコーヒーチケットをお渡しすればいいだけです。文具量販店に行けば、インクジェットプリンター印刷対応の美しいチケット用紙が販売されているので、自作でも立派なものが作れます。

サブスク決済は、アイディア次第で固定客を増やしていくことにつながります。固定客は、頻繁に利用をしてくださる優良顧客であるだけでなく、お店のいい評判を口コミやSNSで広げてくれるエバンジェリスト(伝道師)にもなってくれます。商売の規模は小さくてもつぶれずに長く生き残っているお店は、必ずこういうお得意様をつかんでいます。サブスク決済を利用することで、お店の経営を安定させることができます。

仮売上処理の注意点

お客様に仕組みを説明することが必要

仮売上決済の時点では、お客様の口座から代金が引き落とされることはありません。しかし、クレジットカードの与信枠は確保されてしまいます。そのため、例えば、お客様のクレジットカードの利用限度額が月50万円であって、20万円の仮売上決済をした場合、お客様はその月はあと30万円分しかクレジットカードが利用できなくなります。仮売上決済の有効期限は、カード会社によって異なりますが、30日から90日というのが一般的です。

この仮売上処理の仕組みをお客様にきちんと説明し、理解をしてもらうことが必要です。場合によっては、他の店舗でクレジットカードを利用しようとして、利用限度額を超えて決済ができなかったということも起こりかねません。また、クレジットカードの仕組みに詳しくないお客様からは、「あの店はクレジットカードを操作して、変なことをする」という誤解を受けることにもなりかねません。「お支払いの予約をさせていただき、引き落としは当日に行います」という説明をしておく必要があります。また、「当日は、クレジットカードを提示いただく必要はありません。お気軽にお立ち寄りください」という利便性も強調しておくといいでしょう。

仮売上処理の方式が異なるカードがある

日本のカード会社が発行しているクレジットカードでは問題はありませんが、デビットカード、プリペイド式カード、海外のカード会社が発行している一部のカードでは、仮売上処理の方式が異なることがあります。

仮売上処理をした際に、少額の代金を引き落としてしまう方式のものがあるのです。実売上処理では残りの代金を引き落とし、実売上処理が行われなかった場合は、自動返金される仕組みです。決済ネットワーク処理の技術的な理由によるものです。
このようなカードをお使いのお客様には、仮売上処理の段階で少額とは言え、引き落としが発生することをお客様にご案内しておく必要があります。どのカードがこの方式であるのかは、契約をしている決済代行会社に問い合わせをすれば親切に教えてくれます。

仮売上処理・サブスク決済(継続課金)で、売上拡大のまとめ

クレジットカードの決済処理は、与信承認、仮売上処理、実売上処理の3段階があります。仮売上処理と実売上処理を分離することで、予約販売などさまざまな販売方法に対応することができます。
また、決済代行会社では、この仕組みを利用して、定額を定期的に決済するサブスク決済のサービスを提供しています。サブスク販売は、店舗経営を安定化する効果があるため、さまざまな小売業に広がり始めています。

コラム:女性の間で人気が高まっている「お花のサブスク」

女性を中心に生花のサブスクが人気になっています。その秘密は圧倒的なお得感です。コストパフォーマンスがいいと評判のbloomee(ブルーミー、https://bloomeelife.com)は、切り花が3本以上で、1回550円+送料という安さです。配送頻度は毎週、隔週から選べ、配送は専用ボックスに入れて郵便ポストに届けられるという手軽さです。手間をかけず、お金をかけず、季節の生花を楽しめることから人気になっています。
この他、切り花から本格的なアレンジフラワーまで、配送も自宅配送や店舗受取など、それぞれのコンセプトに応じたお花のサブスクが20社以上もサービスを提供しています。

お花のサブスクには、低価格のものから高価格のものまでさまざまありますが、共通しているのは、生活の中にいつも花を飾る習慣がある人にとっては、その都度、生花を購入するよりもお得になるということです。
なぜ、コストパフォーマンスの高い料金設定にできるのでしょうか。それはサブスクに経営を安定する効果があるからです。

1)毎月、決まった売上が立つことで経営が安定します。
2)毎月、決まった量の商品を仕入れることで、仕入れ価格を抑えることができます。
3)毎月、決まった量の生花を生産することで、生産者の収入が安定をします。

つまり、うまくサブスクを設計し、想定通りの利用があれば、企業だけでなく、消費者、生産者にもメリットが生まれるのです。

特に、サブスクと一般小売の組み合わせでは、サブスクで収入を得て、経営を安定させ、店頭小売では思い切った挑戦をして利益をねらうという、攻めと守りを兼ね備えた店舗経営が可能になります。このサブスク効果は、生花だけでなく、すべての小売業にあてはまります。サブスク販売が広がっている理由はここにあります。(執筆:牧野 武文氏)


図(1) 一般的なカード決済の流れ


図(2) サブスク決済のイメージ

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