モバイルオーダーは中小飲食店でも導入できる 人件費を下げ、客単価をあげる効果が望めるモバイルオーダー

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街を見回しても、キャッシュレス決済に対応している店舗がほとんどになってきた。2021年1月から3月までに行われた「キャッシュレス決済実態調査アンケート」」(経済産業省キャッシュレス推進室)では、72%の中小事業者が何らかのキャッシュレス決済を導入していたという結果になった。このアンケートの対象は全業種であり、建設業や製造業などのBtoB企業も含まれている。BtoB企業では現金(銀行振込)でじゅうぶんであることを考えると、飲食店、小売店といったBtoC企業ではほとんどがキャッシュレス決済に対応したと考えていいかもしれない。

しかし、キャッシュレス決済対応はゴールではなく、スタート地点だ。キャッシュレスにすることにより、さまざまな利便性の高いサービスが実施できるようになり、販売を拡大していくことができる。

コロナ禍により一気に普及したフードデリバリーもそのひとつだ。デリバリー企業がキャッシュレス対応することで、伝統的な出前とは異なる次元の効率化が可能になった。もし、キャッシュレス決済というものが存在してなかったら、「集金にいく」という業務が発生し、とても数百円の手数料ではデリバリーはできなかった。


フードデリバリーに続いて、導入が進み始めているのがモバイルオーダーだ。典型的なのはマクドナルドとすき家だ。
マクドナルドでは、公式アプリの中から注文ができるようになっている。店内にいてもいなくても注文ができ、レジに並ぶ必要がない。マクドナルドに向かっている最中に注文をしておけば、到着する頃には商品ができあがっているためレジに並ぶ必要がない。また、店舗についてからでも、先に席を確保してしまい、その席から注文をすればスタッフがテーブルに配膳してくれる。

すき家では、各テーブルにタブレットが設置をされ、タブレットから注文をすると、スタッフが料理を配膳してくれる。レシートも渡されるので、精算は帰る前にレジで行うというものだ。

このようなモバイルオーダーシステムは、タブレットやクラウドシステムを必要とすることから、大手チェーンでなければ導入は難しいと考えている方も多いかもしれないが、そんなことなことはなく、さまざまな企業が中小向けのクラウドサービスを提供している。価格も月額費用0円から数百円というものもあり、中小飲食店や個人経営の飲食店が導入するのも難しくはない。


最も簡単な方法は、テーブルやメニューにQRコードを記載しておき、来店客のスマートフォンを使って読み込んでもらうというスタイルだ。スマホを持っていない来店客は利用ができないため、全員が利用できるわけではないが、一部の来店客に量してもらうだけで大きな省力化になる。店舗側はモバイルオーダーシステムさえ導入しておけば、注文用タブレットなどを用意せずに済むのが利点だ。

また、決済もキャッシュレスで注文時に精算してしまうのが望ましいが、通常通りのレジ精算でもかまわない。
これだけの簡単なモバイルオーダーシステムでも、店舗、来店客の双方に大きなメリットがある。
最も大きなメリットはスタッフ業務の効率化だ。スマホ決済が日本よりも早く普及した中国では2018年からこのモバイルオーダーシステムが飲食店に急速に普及をした。その頃、公開された「2018モバイルオーダー趨勢洞察報告」(第一財経商業データセンター)にモバイルオーダー導入前と導入後の業務時間の測定結果が掲載されている。

これによると、フロアスタッフは1組の客あたり15分2秒の時間を使っていた。この店舗は中華料理で、紙ベースの注文表を使っていたため、紙で受けた注文を店舗のシステムに入力をするという余分な作業も発生していた。このような作業が不要となり、モバイルオーダーシステム導入後はスタッフの負担は8分10秒まで減少している。
この数字を利用して、先ほど例に挙げた最も簡単なモバイルオーダースタイル「来店客のスマホから注文してもらい、レジで精算」の場合の業務時間を計算してみると、11分40秒となり、これでも22.4%の省力化が可能になる。


モバイルオーダーシステムの導入のメリットは省力化だけではない。

1)注文ミスによるトラブルがなくなる
飲食店でトラブルになるのが、来店客から「注文したのとは別のものが配膳されてきた」というクレームだ。これを防ぐために、スタッフは注文内容を復唱するなどの対策をしているが、それでもこのトラブルはなくならない。多くの場合、来店客側の勘違いだが、店舗側としてはそれを追求することはできず、来店客の意向に沿う形で解決をすることになる。しかし、すでにつくってしまった料理は無駄となり、ロスとなるのは避けられない。
モバイルオーダーでは来店客が自分で注文操作をするために、オーダーミスの原因が来店客側にあることは明白であるため、強いクレームを入れる来店客は少なくなり、トラブルが大きくならずに済む。

2)追加注文による客単価アップが期待をできる
モバイルオーダーにして、多くの飲食店が実感をするのが追加注文が増えるということだ。例えば、飲み物がなくなった時、多くの来店客はそれをきっかけに帰ることを考える。しかし、すぐに注文ができる環境がああれば追加注文をすることも多い。また、他のテーブルに運ばれた料理を見て、それをメニューで確かめて注文したくなるという効果もある。モバイルオーダーのシステムやメニュー構成にもよるが、追加注文による客単価アップが期待をできる。

3)ピークタイムの回転率が上がる
昼と夜のピークタイムはあらゆる業務が遅れがちになる。そのため、席にはついたもののオーダーを取りにこないという空白時間が生まれがちで、これが回転率を低下させている。来店客も待たされることは好まないため、モバイルオーダーを積極手に利用するようになり、ピークタイムの回転率を上げることができる。

4)デジタル化により経営分析が可能になる
すべてのオーダーがデジタルデータ化をされていれば、後でさまざまな経営分析ができるようになる。紙の注文伝票を使っていると、経営分析をするには注文内容を入力しなければならない。しかし、モバイルオーダーを導入すると、来店客が自分でオーダーの入力をしてくれるようになる。
中にはスマホを持っていない、スマホが苦手、面倒という人が、スタッフに対面で注文をすることがあるが、スタッフも端末を持ち、モバイルオーダーシステムを起動して注文を受けることで、店舗のデジタル化が可能になる。


モバイルオーダーは、最終的にキャッシュレス決済までオーダー時に行ってしまうのが理想だ。そこまでいくとレジ業務も不要になり、スタッフの省力化はますます進む。
ただし、一気にそこまで大きく変えると、スタッフが戸惑うだけでなく、なじみ客も戸惑うことになる。そのため、まずは注文だけをデジタル化し、軌道に乗ったところで決済もモバイルオーダー内で行うという段階を経ながら進めていくのがベストだ。

また、モバイルオーダーには店外モバイルオーダー(ピックアップ)もある。店外からオーダーをして決済まで行い、店舗で商品を受け取るというテイクアウトの事前注文の仕組みだ。さらに、フードデリバリー企業を利用したデリバリーもある。このような段階を踏むことも想定して、総合的なサービスを提供している業者を選定することも重要だ。

個人規模から中小チェーンまで対応可能なモバイルオーダーシステムを提供している企業も増えてきている。有名なところでは次のような企業がある。

1)O:der Platform
SHOWCASE GiGが運営するモバイルオーダープラットフォーム。顧客が自分のスマホで注文するO:der Table、テーブルに設置した端末から注文するO:der Kiosk、テイクアウトの事前注文であるO:der ToGoなどが主要なサービス。
https://business.oderapp.jp

2)L.B.B.Cloud
LBBが運営するモバイルオーダーシステム。さまざまなシーンのモバイルオーダーシステムから予約、マーケティングなどまで対応するサービスを用意している。初期費用0円で導入できるキャンペーンをよく行っている。
https://lbb.co.jp

3)Okage DX Platform
モバイルオーダーからデジタルサイネージ、セルフレジ、POSレジなどまで総合的なサービスを提供している。自分で設置などを行う「セルフでおトクプラン」は、導入費用0円、月額1万1000円から利用できる。
https://okagekk.com

この他にも、中小店舗でも導入可能なモバイルオーダーシステムはたくさんある。まずは資料を請求。そして、導入事例を見て、導入済みの店舗にお客として行って見る。そこで多くの気づきがあるはずだ。それからじっくりと業者を選定していくと失敗が少ない。

キャッシュレス決済は目的ではなく、そこから次世代サービスにつなげるための道具にすぎない。飲食店がキャッシュレス決済の次に考えるべきなのはモバイルオーダーだ。(執筆:牧野 武文氏)



■図1:店内モバイルオーダーで最も簡便な方法は、来店客の自分のスマートフォンを使ってもらい、通常通りレジで精算してもらうというもの。個人飲食店でも導入が可能で、配膳業務が軽減でき、追加注文による客単価の上昇が期待できる。比較のために店外モバイルオーダー(ピックアップ)、フードデリバリーと比較をした。



■図2:マクドナルドのモバイルオーダー注文画面。メニューが表示され、買いたいものをタップしていく。非常に簡単だ。





■図3:マクドナルドの場合は、テーブル番号を入力すれば、スタッフがテーブルまで配膳してくれる。先に席を確保して、そこから注文することができる。




■図4:セット内容の変更ができる他、具材のカスタマイズなども可能になっている。




■図5:中国の実例では、ある飲食店は1組の客に15分2秒の時間を使っていた。これがモバイルオーダーの導入により8分10秒までに減少をした。



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