59.1%の人が「現金支払いのみで困ったことがある」と回答 決済トラブルを起こさない工夫も接客品質のひとつに | PCI DSS Ready Cloud

59.1%の人が「現金支払いのみで困ったことがある」と回答 決済トラブルを起こさない工夫も接客品質のひとつに

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多くの人が実感をしているように、コロナ禍以降キャッシュレス決済は広く普及をした。「インターネット消費者トラブルに関する調査研究」(消費者庁)のスマートフォン利用者で1年以内にオンラインショッピングをしたことがある人を対象にしたキャッシュレス決済についてのアンケート結果では、「キャッシュレス決済での支払いが多い」と答えた人が61.2%にものぼり、「キャッシュレス決済しかしていない」(12.9%)と合わせて、74.1%がキャッシュレス派となった。

新型コロナ感染拡大の影響を尋ねたアンケートでは、「キャッシュレスの利用頻度は増えた」「以前から利用していて、頻度は変わらない」と答えた人が合計96.3%となった。社会はコロナ禍で大きな打撃を受けたが、キャッシュレス社会への道筋が見えてきたということが数少ないよかったことのひとつになっている。


店舗で利用した支払い方法(複数回答)では、現金とクレジットカードが並び、それにコード決済が続いている。意外に現金が多いが、これは現金しか利用できないという店舗がまだまだあるからだ。

店舗がどのような決済手段に対応するかは店舗の自由であり、強制されるものではないが、そろそろ「現金のみ」という店は消費者から避けられ始めている。いちばんの理由は、現金はその場でチャージができないということだ。クレジットカードは、ショッピング枠を使い切っていなければ(そういう状況はそれほど多くない)残高を気にする必要なく、コード決済の多くはその場でスマホからチャージをすることができる。つまり、支払いができないということはまず起こらない。

ところが現金は手持ちのお金が足りなければ、銀行のATMに行くしかなく、その場で支払いができない。購入をあきらめるだけならともかく、あと精算の飲食店などでは無銭飲食を疑われることになり、いったん銀行にお金を下ろしに行き、再び支払いにいかなければならない。非常に面倒くさいことになる。
つまり、キャッシュレス決済は「残高がいくらあるかを気にせずに利用する」ことができるが、現金決済は「利用する前に残高を気にしなければならない」煩わしさがあるのだ。

このアンケートでは、「現金払いしか利用できずに困った店舗、場面等はありますか」という問いに59.1%の人が「ある」と回答している。

最も多かったのは病院・診療所、薬局だ。多くの利用者は通いやすい病院、医療レベルの高い病院を選び、決済手段で選ぶという人は少ないため、病院のキャッシュレス決済導入がなかなか進まない状況になっている。「令和2年度商取引・サービス環境の適正化に係る事業」(経済産業省)の「医療分野におけるキャッシュレス決済の普及パート」報告書には、医療機関のクレジットカード決済比率が2018年度で7.3%という数字があげられている。

しかし、利用者から見ると、病院はキャッシュレス決済に対応をしてほしい施設のひとつだ。なぜなら、支払額の予測がつきづらいからだ。簡単な診察の場合、支払いが数百円のこともあれば、検査などがあった場合は数万円になることもある。利用者側からはどのような治療が行われるかはわからないため、その日の支払額の予測がつかず、手持ちの現金が足りないということがしばしば起きる。多くの病院が「後日のお支払いでけっこうですよ」と穏やかな対応をしてくれるが、きちんと支払いを済ませたいと考える人も多いだろう。

病院のキャッシュレス導入はお金の電子化だけでなく、自動精算機を導入して会計の待ち時間を減らしたり、人件費を削減できる他、アプリ化をして支払いだけでなく、診察券や処方箋、カルテの電子化、オンライン予約などDXに直結するメリットが得られる。
また、日本医師会ORCA管理機構(https://www.orcamo.co.jp/products/cashless.html)では、日本医師会員向けに決済手数料を通常の半分程度にするなどのプランを用意している。


病院に次いで「現金払いしか利用できずに困った店舗」にあげられているのが飲食店だ。現在では多くの飲食店が何らかのキャッシュレス決済に対応するようになっているが、個人経営の飲食店を中心に現金払いしか対応しない店舗が残っている。飲食店経営者からすればやはり手数料の問題と、振り込みタイミングの問題が大きい。しかし、利用者から見ると、すでに現金払いしか利用できない飲食店は悩ましい問題になっている。

現金のみの店というのはすでに少数派になっているため、支払いができないというトラブルも増えている。現金払いのみの飲食店では、入口付近に「当店は現金決済のみです」という掲示をしていることが多くなったが、多くの人が掲示には気がつかない。飲食店はだいたいどこでもキャッシュレスに対応しているという感覚が常識になり始めていて、決済方法を確認するという感覚がなくなっているからだ。

もし、理由があって現金払いにしているのであれば、先払い方式に変えることがポイントだ。ラーメン店などでは、現金のみ・先払い方式を採用しているところが多い。これであれば、利用者は現金の持ち合わせがないことに気がつき、その場で帰ることができるため、大きなトラブルになることはない。レストランやバー、居酒屋などのように追加注文をするところでは、後精算、後払い方式を取らざるを得ないが、追加注文のほとんどない喫茶店、定食屋、ランチなどの場合は、先払い方式に切り替えることで、無駄なトラブルに時間を取られることがなくなり、来店客にも「食べてしまってからお金がない」という不快な思いをさせずに済むようになる。

キャッシュレス決済の中では、コード決済の普及が目覚ましい。アンケート結果では、「現在利用している」と答えた人が74.9%にもなった。
「コード決済を利用しているときに、トラブルにあったり困ったりしたことがありますか」という質問に対する回答の第1位は「通信障害等で決済ができなかった」だった。携帯電話ネットワークの大規模障害や、決済ネットワークの障害ということもまれにあるが、多くは地下などで携帯電話ネットワークの電波が弱いため、決済アプリがうまくネットワークにアクセスができないということがほとんどだ。

この解決法は2つある。

1)携帯電話キャリアに相談をしてアンテナを増設してもらう
携帯電話キャリアはどこも電波の改善の相談窓口を設けている。相談する時に「ビジネス上の決済に差し支えが出ている」と相談すると、迅速に対応してくれることが多い。この時、電波に問題があった時刻や状況などのメモをつくっておくとさらに真剣に対応してくれる。

2)Wi-Fiを設置しておく
コード決済はネットにアクセスができれば利用できるため、携帯電話ネットワークが確保できなくても、Wi-Fiでインターネットにアクセスができれば決済ができる。そのため、店内にWi-Fiがあれば、そちらに入ってもらうことで決済が可能になる。個人経営の店舗などで、顧客用にWi-Fiネットワークを提供できないという場合は、業務用に使っているWi-Fiを顧客に一時的に解放することも可能だ。詳しくはWi-Fiルーターのマニュアルを参照していただきたいが、ゲストネットワークを構築することが可能だ。これは業務用のネットワークとは完全に分離されたネットワークで、ゲストネットワークから業務用のデータにアクセスすることはできない。WEPキー(パスワード)を簡単なものに設定しておいても、セキュリティー上大きな問題は起こらない。


2番目の問題は「店員が不慣れで時間がかかった」というものだ。コード決済は、
1)QRコードまたはバーコードを提示してもらい、店舗側がスキャンする
2)店舗のQRコードをスキャンしてもらい、金額を入力の上、支払いをしてもらう
という2つの方法があり、多くのコード決済で共通をしている。そのため、店員が決済操作に戸惑うことはほとんどなくなっている。
しかし、問題はコード決済の種類が多すぎて、レジなどの設定を間違えることだ。異なるペイメントでスキャンしようとすれば当然エラーとなる。対応策は2つある。
1)レジ横にコード決済一覧表を貼っておく
レジ横に対応しているコード決済一覧表を貼っておく。名称が似ていたり、海外のコード決済の場合、母国と日本での呼び名が異なる場合もあるので、読み方も添えておくといい。
2)マルチペイメントPOSシステムを導入する
最も間違いがないのはマルチペイメント対応のPOSシステムを導入することだ。レジ操作は「コード決済」を指定するだけ、QRコードをスキャンすれば自動的にペイメントの種類を判別して決済をしてくれる。


3番目の「残高不足で決済ができなかった」、4番目の「キャンペーンが適用されなかった」などは、店舗側の問題ではなく、利用者側のミスが原因だ。コード決済では割引クーポンなどもあらかじめ取得をしておけば、自動的に適用される仕組みになっている。店舗側では対応しようがないことを告げ、各ペイメントのカスタマーセンターに連絡を取ってもらえるように誘導をすることしかできない。
その他、「支払金額を間違えて入力して決済してしまった」というトラブルも利用者側の落ち度だが、決済が適切に完了していない以上、店舗側も無視することはできない。少なく入力してしまった場合は、その場で計算をして、不足分をもう一度支払ってもらう。多く入力してしまった場合は、その決済をいったん取り消して返金処理をし、改めて正しい金額を入力して決済し直してもらうというのが鉄則だ。この時、ペイメントによって返金には数日の時間がかかることを説明しておくと、不要なトラブルにならない。


この調査では、最近、利用者が急増している後払い決済(BNPL=Buy Now Pay Later)のトラブルについても調査をしている。BNPLは、日本ではPaidy(ペイディ)などが代表格で、分割払い前提で買い物ができ、後ほどコンビニ支払いや口座引き落としで分割支払いをしていくというものだ。クレジットカードがなくても分割払いが利用でき、なおかつクレジットカードやローンのような信用調査も必要ないことから、若い世代を中心に世界的に広がり始めている。

特にアップルのような電子機器ブランド、SHEINなどのアパレルブランド、AmazonなどのECが対応したことにより、利便性の高い決済方法として認知され始めている。
リアルカードの発行も可能で、VISAなどのクレジットカードと同じ仕組みで店舗決済にも利用できる。BNPLによるトラブルは少なく、「支払いが遅れてしまった」「請求書を紛失した」という利用者側の問題が中心になっている。店舗での決済は、VISAなどのクレジットカードとまったく同じ扱いであるため、特にBNPLのために何かを注意しておくという必要はない。

現在はキャッシュレス決済が普及をし、キャッシュレス社会になるための過渡期にあるため、決済の種類が多すぎて、現金だけの時代と比べてかえって戸惑うことが多くなっている。そのため、店舗側も利用者側も勘違いや知識不足により、小さなトラブルが起きることになっている。このようなトラブルは、店舗と利用者のどちらに落ち度があるかは問題ではない。利用者は自分の落ち度であっても不快な出来事が起これば、その店舗の利用を避けるようになってしまう。店舗は、そのようなトラブルを先回りして予防策を講じておく必要がある。トラブル対応は顧客サービス、接客品質の重要な要素なのだ。(執筆:牧野 武文氏)


図1:新型コロナの感染不安が薄れた2022年8月下旬の調査では、「キャッシュレス決済での支払いが多い」と回答した人が61.2%となり、キャッシュレス派は74.1%にもなった。「インターネット消費者トラブルに関する調査研究」(消費者庁)より引用。


図2:新型コロナの決済に対する影響を尋ねた質問では、96.3%の人が以前からキャッシュレス決済を使っていたか、キャッシュレス決済の割合が増えたと回答している。「インターネット消費者トラブルに関する調査研究」(消費者庁)より引用。

図3:店舗で利用する決済手段(複数回答)では、現金とクレジットカードがほぼ同数となった。また、コード決済も利用率が上がってきている。「インターネット消費者トラブルに関する調査研究」(消費者庁)より引用。

図4:現金払いしか利用できず困った場所についての回答では、医療機関が圧倒的に多かった。また、飲食店、小規模小売店も多い。「インターネット消費者トラブルに関する調査研究」(消費者庁)より引用。

図5:コード決済を使っている人は74.9%にも達した。クレジットカードや電子マネーよりも手軽に利用ができ、また各社がさまざまなポイント還元を行っていることも影響している。「インターネット消費者トラブルに関する調査研究」(消費者庁)より引用。

図6:コード決済を利用しているときのトラブルは、「通信障害」と「店員が不慣れ」の2つが上位になった。「インターネット消費者トラブルに関する調査研究」(消費者庁)より引用。

図7:後払い決済(BNPL)も急速に認知され、利用が広がっている。リアルカードの発行も可能で、通常のクレジットカード感覚で利用することができる。「インターネット消費者トラブルに関する調査研究」(消費者庁)より引用。

図8:後払い決済で困ったことの多くは、利用者側に原因がある問題だ。店舗ではクレジットカードと同じ扱いをしておけば問題はない。「インターネット消費者トラブルに関する調査研究」(消費者庁)より引用。


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